東電「工程表」 立ちはだかる「壁」
2011.5.11 01:02
福島第1原発事故の収束に向けた工程表が発表されて3週間が過ぎた。政府と東電の事故対策統合本部は「順調に作業は進んでいる」と強調するが、作業が進むにつれ、工程表の実現に向けた壁も出てきている。統合本部は発表から1カ月となる今月17日に新たな工程表を示す方針だ。
冷却
1〜3号機は損傷した核燃料が出す高熱を取り除くため、原子炉圧力容器へ強制注水を続けている。 工程表の目標は、6〜9カ月後には炉内温度が100度未満となる「冷温停止」を達成、その後も安定冷却を続けて燃料を取り出すことだ。
東電が「一番の近道」とする、格納容器を水で満たして中の圧力容器ごと冷やす「水棺」。この作業が先行しているのが1号機だ。 水素爆発の懸念から注水量の増加を一時見合わせたが、再び増水に踏み切った。空冷で水を循環冷却する装置を設置できれば、本格的な冷却が一挙に進む。 東電も「1号機のノウハウを応用すれば、2、3号機での作業は格段に早くなる」とし、1号機の作業の進捗(しんちょく)に期待を寄せる。
ただ、問題は
2号機だ。原子炉建屋内に放射性物質(放射能)を含む蒸気が充満し、ロボットでさえ作業が難しく、現状把握が最も遅れている。格納容器の下部が爆発で損傷したとされ、漏水防止は急務。東電は建屋の水を抜いてセメントでふさぐ方針だが、着手の見通しは立っていない。 京都大原子炉実験所の宇根崎博信教授(原子力工学)は「2号機は状況把握が進まず、改善策がとれない。各号機で最も深刻な状態」とする。
汚染水処理
工程表を「実現させる鍵」と統合本部事務局長の細野豪志首相補佐官が強調するのが、放射性物質を含む汚染水の処理だ。
冷却のために原子炉へ注入する水が損傷で建屋内外に漏れ出しているとみられ、その総量は8万7500トンと推定されている。タービン建屋地下などにたまり作業を阻み、敷地外への流出の危険もつきまとう。 汚染水処理のため、放射性物質の濃度を1千〜1万分の1に下げる浄化施設は6月から稼働予定。浄化した水は再び原子炉の冷却に回す。 低濃度の汚染水を貯蔵するための仮設タンクの増設も進められており、一部タンクへの移送も始まった。
リスク
作業が遅れるリスクを減らす努力も続いている。統合本部は「工程表の道筋を妨げる最大の要因は余震と津波だ」とみており、仮設の防潮堤を6月に設置する方針を打ち出した。 爆発で建屋が損傷した4号機では、核燃料貯蔵プールの耐震補強工事にも着手するが、工事は7月末までかかる見込みだ。 他にも、損壊した建屋から放射性物質が飛散するのを防ぐため、テントのように建屋を覆う構想もあるが、宮崎慶次大阪大名誉教授(原子力工学)は「原子炉などの冷却にめどがつかないと、中に熱がこもってしまうのでは。逆に、冷えて水蒸気の発生が減れば、外に出る放射性物質も減るのだが」と効果を疑問視する。
今後、梅雨や台風シーズンを控え、「大雨、暴風などによる予期せぬ障害で工程が遅れる可能性は十分ありえる」(東電)状態だ。
土壌入れ替え 放射線量低減に期待 文科省が効果を確認
2011.5.11 20:53 東京電力福島第1原発事故で放射性物質に汚染された学校などの土壌について、文部科学省は11日、表層土を約5センチ剥離し数十センチの深さに埋めることで、放射線量を効果的に低減できることが実地調査で分かったと原子力安全委員会に報告した。福島県教育委員会にも同日通知し、実施の判断は地元に委ねた。 実地調査は、4月14日時点の土壌線量が、校庭利用をめぐる国の暫定基準値の毎時3.8マイクロシーベルトを超えていた福島市浜田町の福島大付属中学校と同幼稚園で今月8日に行った。 校庭、園庭の計3カ所で土壌の深さに応じた放射線量変化を調査。その結果、対策を検討すべき放射性物質を含む土壌は表層5センチ程度までと結論づけた。
また、地表の線量が同2.3マイクロシーベルトだった園庭に、深さ50センチの穴を掘り、深さ10センチまでの表層土を底部に置いて埋め戻したところ、線量が10分の1以下の同0.2マイクロシーベルトに減少するなど、効果的に放射線を遮蔽できた。
津波、爆発…福島第1の惨状映像「すさまじい破壊力」
2011.5.11 21:10
海に近いタービン建屋付近には、折れ曲がったパイプや鉄骨が散乱していた=4月22日、福島第1原発(独立総合研究所社長で原子力委員会専門委員の青山繁晴氏撮影)
配管パイプはあめのように曲がり、トラックが地面に刺さっていた。東京電力福島第1原子力発電所を視察した専門家が撮影した映像には、水素爆発だけでなく津波でも破壊された惨状が克明に映されていた。「すさまじい破壊力だ。並大抵のものでは防げない」。被害を目の当たりにした専門家は、こう警告する。 内閣府原子力委員会の専門委員(防護)で、独立総合研究所社長の青山繁晴氏が4月下旬、東電の許可を得て、福島第1原発を視察した。
撮影した映像によると、3、4号機付近の海辺では津波で金属製のコンテナやパイプ、ガードレールなどがなぎ倒され、「あめのようにぐちゃぐちゃになっていた」(青山氏)ほか、流された2台のトラックが運転席側から地面に突き刺さっていた。 「まるで洋上から小型戦術核で攻撃されたかのような惨状だった。津波の破壊力の恐ろしさを知った」
津波被害は海から約200メートル地点にあるタービン建屋付近まで続いていたが、原子炉建屋の下部付近は比較的、被害が少なかった。青山氏は「海側のタービン建屋が盾になって津波を防いだ。原子炉建屋が破損したのは、あくまで対応の遅れによる『人災』だ」と強調する。
今回、政府は中部電力の浜岡原発(静岡県)に稼働停止を要請し、中電はこれに応じた。 浜岡原発は原子炉建屋とタービン建屋の位置が福島第1原発とは逆で、原子炉建屋が海側にある。青山氏は「盾になるものがなく、原子炉建屋に津波が直撃すれば、格納容器などの被害がより甚大になりかねなかった」と危険な状態だったことを指摘。中電は高さ約15メートルの防潮堤を造る予定だが、青山氏は「高さだけでなく、津波の破壊力に耐えうる強度の堤防にすべきだ」と訴える。
また、福島第1原発では大規模余震に備え、東電が6月末までに鉄線と石で造る仮設の堤防を設置予定になっている。青山氏は、当初「土嚢(どのう)を積んで対応」との案を示していた同社や原子力安全・保安院の姿勢を批判。「より堅牢(けんろう)な堤防が必要だ。二度と人災を起こしてはいけない」と強調した。
映像には現場で働く作業員の拠点である免震重要棟内部もあり、吉田昌郎所長以下、作業員らが懸命に働く様子を紹介。現場では、汚染が広がらないように免震重要棟の入り口ドアを3重にするなど、さまざまな工夫がしてあった。
青山氏は「現場は知恵をこらし、日々改良を行っている。政府や東電本社を中心とした官僚主義では対応はおぼつかなく、現場にもっと多くの権限を委譲すべきだ」と訴えている。
放射性物質含む水流出 限度の62万倍 福島3号機
2011.5.11 21:30
東京電力は11日、福島第1原発の事故で、3号機の取水口近くのコンクリート製立て坑から放射性物質(放射能)を含む水が海に流れ出ているのを確認した。立て坑の水からは、海水の濃度限度の62万倍のセシウム134や、43万倍のセシウム137などの放射性物質を検出した。 東電によると、水は電源ケーブルが通る配管から立て坑(縦1.1メートル、横1.4メートル、深さ2.3メートル)に流入していたが、作業員が止水した。東電は、水は震災による亀裂から海へ漏れたとしており、汚染水がたまる3号機タービン建屋側から立て坑へ流入したとみている。 経済産業省原子力安全・保安院は同日、外務省を通じて近隣諸国に状況説明した。 また、事故対策統合本部事務局長の細野豪志首相補佐官は同日、12日に事故後初めて同原発を訪れることを明らかにした。
核燃料、完全露出し溶融 調整した水位計で測定 福島第1原発1号機
2011.5.12 11:48
福島第1原発の状況について説明する、東京電力の松本純一・原子力立地本部長代理=12日午前、東京・内幸町の本店
東京電力は12日、福島第1原発1号機で、調整をした水位計で原子炉圧力容器内の水位を測定したところ、水位は通常時の燃料上端から5メートル以下で、長さ4メートルの燃料が完全に露出して溶け落ち、圧力容器底の水で冷やされているとみられると発表した。
調整前の測定では、約1・5〜1・7メートルが露出している状態とされていたため、想定外の低水位。ただ圧力容器の表面温度は、上部から下部まで100〜120度と比較的低く、東電は「(燃料の)冷却はできている」と強調している。 東電は燃料を冷やすために圧力容器内に毎時6〜8トンの注水を続けていたが、対策が的確でなかったおそれがある。1号機は新たな冷却システムの設置を準備しているが、いまだに圧力容器内の状態を把握しきれていないことで、今後の計画にも影響しそうだ。 東電はこれまで、炉心の損傷割合は55%と推定していた。
土壌から複数の核種検出 放射性物質の放出続く
2011.5.12 13:50 文部科学省は12日、福島第1原発周辺の土壌に含まれる放射性物質を調査した結果、ヨウ素とセシウム以外に「ランタン140」や「テルル129m」など複数の核種を検出したと発表した。ランタン140の半減期は約2日と短く、放射性物質の大気中への放出が続いていることを裏付けた。 文科省は、新たに検出された核種は、これまでに確認された放射性物質に比べ、半減期が短いと説明。「検出量もヨウ素やセシウムより少なく、人体に与える影響は比較的小さい」としている。 ランタン140は、原発から23〜62キロの地点で10日に採取した土壌から、土1キログラム当たり24〜640ベクレル検出。テルル129mは、2〜62キロの地点で3日から10日にかけて採取した土壌から、同540〜18万ベクレル検出された。ヨウ素やセシウムと同様、原発の北西方向を中心に検出量が多い。
注水経路の変更作業続く 圧力容器温度上昇の3号機
2011.5.12 18:21
燃料を入れた原子炉圧力容器の温度が上昇傾向を示している福島第1原発3号機について、東京電力は12日、圧力容器に確実に水を入れるため注水経路を変更する作業を継続した。配管に水を通し、漏れがないかなどをチェックする。 今後は圧力容器への注水は途切れないようにしながら、新たな経路からの注水量を少しずつ増やし、確実に水が入ることを確認してから経路を完全に切り替える。 従来の経路は途中の枝分かれが多く、圧力容器に確実に注水できていない可能性が指摘されていた。圧力容器上部は4月末には80度台だったが、現在は200度を超える状態が続いている。
冠水作業の見直し着手 冷却水、外部に大量漏れか
2011.5.12 18:28 福島第1原発1号機の原子炉圧力容器で燃料が水面から完全に露出し、溶け落ちたとみられる問題で、東京電力は12日、圧力容器や外側の格納容器から水が大量に漏れている可能性があることから、格納容器に水を満たして冷却する「冠水」作業の見直しに着手した。 現在の圧力容器内の水位は高くても底から4メートルで、これまでに注水した計1万トンの水が十分にたまっていない。溶け落ちた燃料によってできた圧力容器底の傷から格納容器に水が漏れ、さらに格納容器から原子炉建屋やタービン建屋などに流れ出たとみられる。格納容器の水位も確認できていない。 東電は事故の収束に向けた工程表の公表から1カ月となる17日に、作業実績を踏まえて工程表の見直し内容を発表する予定で、そのときまでに対策をまとめる。
燃料溶融、圧力容器に穴か 福島1号機、冷却計画に遅れも
2011.5.12 20:26 東京電力は12日、福島第1原発1号機で、原子炉圧力容器内の冷却水の水位が想定より低く、長さ約4メートルの燃料棒が完全に露出し、大半が溶け落ちたとみられると発表した。溶融燃料が圧力容器に穴を開け、冷却水とともに外側を覆う格納容器内に漏れた可能性があるとしている。東電は17日に事故の収束に向けた工程表の変更を発表する方針だが、今後の原子炉の冷却作業にも遅れが出るのは確実で、工程表は大幅な見直しを迫られることになった。 これまで圧力容器内の水位は通常時の燃料上端から約1・5〜1・7メートル下とみられていたが、水位計を調整して測った結果、5メートル以下と判明。ただ、圧力容器下部の表面温度は100〜120度と比較的低く、東電は「燃料は(水に浸かって)冷却できている」としている。 格納容器内にも水はあるため、漏出した可能性のある溶融燃料は冷やされて発熱しておらず、水素爆発の危険性は低いとみている。 東電はこれまで、炉心の損傷割合は55%と推定していたが、今回は「溶けて(本来の)燃料棒としての形状を維持できていない」として燃料が完全溶融した可能性を否定していない。
経済産業省原子力安全・保安院の西山英彦審議官は、圧力容器内の水位は確認できていないとしながらも「一部の燃料は形を残しながら水蒸気で冷やされている」とし、「一定部分は溶けて(圧力容器の)下にあり、(水で)うまく冷やされている」との見解を示した。
東電は、燃料を冷やすために12日までに1号機圧力容器内に計1万トン余りを注水。現在も毎時8トンを注入し、圧力容器を覆う格納容器ごと水を満たして冷やす「冠水(水棺)」作業に取り組んでいるが、「3千トン近くの水がどこかにいっている」(東電)状況といい、相当量の水が圧力容器底部の溶接部などから漏れ出ている可能性がある。
東電は、圧力容器に確実に注水できるよう、注水経路の切り替えを実施。水漏れなどを受け、今後、注水量を増やすことも検討する。
一方、圧力容器損傷の可能性も浮上したことで、収束に向けた工程表にも大きく影響するとみられる。ただ、保安院の西山審議官は「燃料が安定的に冷やされていれば、仮設の冷却装置をつけて冷やすことができる」として、「必ずしも工程表に大きな遅れが出るものではない」としている。
核燃料露出溶解 工程表達成に「黄信号」
2011.5.12 20:30 (1/2ページ)
東京電力福島第1原発1号機で、水位計を点検する作業員=10日(東京電力提供)
12日、東京電力福島第1原発1号機で、原子炉圧力容器内の核燃料棒が完全に露出したことが判明し、圧力容器損傷の可能性も浮上した。原子炉を安定冷却するため、圧力容器を覆う格納容器ごと水で満たす作業が進められているが、見直しは避けられない。専門家からは「圧力容器に穴が開いているなら、もう打つ手がない」と危惧する声も上がり、事故の収束に向けた工程表の達成に「黄信号」がともった。(原子力取材班)
炉心溶融?
「溶けた燃料が下に落ち、圧力容器の下部を損傷させている可能性もある」。東電の松本純一原子力・立地本部長代理は12日の会見で、初めて「炉心溶融」の可能性に言及した。 東電はこれまで、1号機の核燃料について、約55%が損傷していると推定。一貫して「燃料が溶けて下に落ちていることはない」とし、本来の形状を維持していると説明してきた。 ところが、今回調整した水位計で圧力容器内の水位を測定した結果、燃料の大半が露出している状態だったことが判明。
これまでは、燃料の露出は一部とされてきただけに、京大原子炉実験所の小出裕章助教(原子核工学)は「東電が発表したデータはもう信頼性がない」と手厳しい。
米スリーマイルアイランド原発事故(1979年)では燃料の約45%が溶け、その約3分の1が底に落ちたが、小出助教は「今回の発表をみると、100%の損傷以外考えられない」と厳しい見方を示している。
微粒子化?
核燃料の大半は溶融して圧力容器の下部に落ちたとみられるが、下部にたまった水に漬かることで、冷却ができているとされる。実際、圧力容器下部の表面温度は100〜120度と比較的低い。
宮崎慶次大阪大名誉教授(原子力工学)は「圧力容器の底の水に、溶けた燃料が落ちて微粒子化しているのではないか」とみる。 核燃料が冷却できていない場合、水素が発生して爆発の懸念も生じるが、宮崎名誉教授は「温度が低いのでそういう状況ではない」と、再爆発の可能性を否定している。
どこから?
原子炉冷却に使われた大量の水が、放射能を含んだまま環境に漏出した恐れが懸念されている。 圧力容器には、注水は毎時8トンペースで続けられているが、水位は上がっておらず、九州大の工藤和彦特任教授(原子炉工学)は「冷却水の行き先が分からない。漏洩(ろうえい)があるとしか考えられない」と指摘。 溶け落ちた燃料は圧力容器底にある制御棒駆動装置や溶接部を貫通し、そこから水が漏出している可能性が高いとみられ、工藤特任教授は「できるだけ早く損傷部を突き止める必要がある」とする。 東電が工程表実現への「一番の近道」としていた冠水(水棺)作業が最初に着手された1号機だが、専門家は「工程表通りに、冷温停止に持って行くのは難しい」と口をそろえる。工程表は第一関門からつまずき、先行きに不透明感が漂い始めた。
東電、夏場の電力供給420万キロワット上乗せ、ガスタービン新設などで 2011.4.15 18:23
東京電力は15日、夏場の電力供給力を、従来計画に比べ420万キロワット(9%)増の5070万キロワットに上方修正したと発表した。ガスタービンの新設や、東日本大震災で被災した火力発電所が予定より早く復旧する見込みとなったため。 ただ冷房需要が急増する8月には、最大で5500万キロワットの需要を見込んでいる。依然、500万キロワット程度の不足が予想されるなか、地域ごとに電力供給をとめる「計画停電」の実施の可能性は残っている。 東電によれば、供給力の上乗せ分は、ガスタービンの設置などで合計120万キロワット、火力発電所の復旧で110万キロワット、揚水発電で400万キロワットを確保。その一方で柏崎刈羽原発1、7号機が、8月に定期検査のため運転停止するため190万キロワット分減る見込みだ。 同日、会見した藤本孝副社長は「今後も計画停電の原則不実施を継続するため、供給力の積み上げに最大限努力する」と述べた。
東電、供給力大幅上積み 今夏 火力発電復旧、東北電に融通も 2011.5.13 07:17
東京電力は12日、東日本大震災で被災した火力発電所の復旧などにより、8月末の電力供給力を従来計画より550万キロワット上積みして5620万キロワットに引き上げる方針を固めた。これを受けて政府は、発電所の多くが被災して供給不足が深刻な東北電力に対し、東電から140万キロワットを融通することなどを盛り込んだ夏の電力需給対策を決定。両社管内の企業と家庭には一律15%の節電を求める。 政府は、13日に電力需給緊急対策本部の会合を開き正式決定する見通し。
東電によると、広野火力発電所(福島県広野町、380万キロワット)を8月までに復旧するなどして、供給力を引き上げる。さらに広野火力発電所を再稼働できれば、電力需要の少ない夜間に水をくみ上げ、昼間に放水・発電する揚水発電所からの電力供給も増やせる。東電に75万キロワットを融通してきた中部電力が浜岡原子力発電所停止で送れなくなるが、関西電力などからの融通で代替。これらで計5620万キロワットを確保する。
東電は夏の電力需要は最大5500万キロワットと見込んでおり、供給力はこれを上回るが、140万キロを東北電に送ることで余力はなくなる。東北電も供給力はぎりぎりとなるため、引き続き節電が不可欠となる。
汚染水流出は作業が原因
2011.5.13 00:38 東京電力は12日、3号機取水口近くの穴(ピット)から海に汚染水が流出した問題で、3号機の注水経路変更に伴う準備作業が原因となった可能性があることを明らかにした。松本純一原子力・立地本部長代理は記者会見で「検討が不十分だった」と謝罪した。 汚染水流出は11日に判明。海水の放射性物質の濃度調査から、流出は10日ごろに始まった可能性があるという。海への流出は11日時点で止まっている。 東電は燃料を入れた3号機の圧力容器の温度が上昇傾向を示しているため、注水経路の変更作業を続けているが、配管をつなぎ替える際、タービン建屋の復水器にたまった水を同建屋の地下に移動させたことが、流出につながった可能性があるという。
一方、注水経路の変更作業は12日も継続。圧力容器への注水は続けながら、新たな配管に水を通して漏れがないかをチェックした。順調にいけば13日にも切り替える。
東電1号機「メルトダウン」認める
2011.5.13 01:21 東京電力は12日、福島第1原発1号機で、燃料棒(長さ約4メートル)が冷却水から完全に露出して溶け落ち、圧力容器下部に生じた複数の小さな穴から水とともに格納容器に漏れた可能性があると発表した。東電は、この状態を「メルトダウン(炉心溶融)」と認め、格納容器ごと水を満たして冷やす「冠水(水棺)」作業の見直しに着手した。冷却作業に遅れが出るのは確実で、事故収束に向けた工程表は大幅な見直しを迫られることになった。 これまで圧力容器内の水位は通常時の燃料上端から約1・5〜1・7メートル下とみられていたが、水位計を調整して測った結果、5メートル以下と判明。1号機原子炉の燃料がすべて露出していた時期があった可能性が高く、配管の溶接部に複数の小さな穴が開き、溶融燃料が格納容器に流出したとみられるという。
ただ、圧力容器下部の表面温度は100〜120度と比較的低く、東電は「燃料は(水に浸かって)冷却できている」としている。
格納容器内にも水はあるため、漏出した可能性のある溶融燃料は冷やされて発熱しておらず、水素爆発の危険性は低いとみている。 経済産業省原子力安全・保安院の西山英彦審議官は圧力容器内の水位について、「(燃料の)一定部分は溶けて下にあり、(水で)うまく冷やされている」との見解を示した。 東電はこれまで、炉心の損傷割合は55%と推定していたが、今回は「溶けて(本来の)燃料棒としての形状を維持できていない」として燃料が完全溶融した可能性を否定していない。 東電は、燃料を冷やすために12日までに1号機圧力容器内に計1万トン余りを注水。現在も毎時8トンを注入し、冠水作業に取り組んでいるが、「3千トン以上の水がどこかにいっている」(東電)状況といい、圧力容器下部の溶接部から漏れ、さらに格納容器から漏水しているとみている。 今回の事態を受け、冠水作業について東電は「見直す必要がある」とし、保安院も「(燃料の)頂部まで水で満たすのは考えにくい」との見方を示した。
福島第1、計測数値再検証 事故収束工程表大幅見直しへ
2011.5.14 01:21 東京電力福島第1原発事故で、事故対策統合本部事務局長の細野豪志首相補佐官は13日、「計測できた数値が信頼できるか、1〜4号機すべてを調べ直す必要がある」と述べ、各原子炉などの現況を再検証し、事故収束に向けた工程表を大幅に見直す方針を明らかにした。工程表の更新は17日に予定されている。 1号機については原子炉格納容器を水で満たす「冠水(水棺)」作業を行う予定だったが、溶けた燃料が圧力容器の底にたまっているため、東電は予定より低い位置までの注水で安定的冷却ができるとの考えを示した。東電は13日、空冷式の冷却装置2台を搬入した。
一方、3号機の原子炉建屋について、水素爆発前日から高い放射線量のデータを把握していたにもかかわらず公表していなかったとの一部報道を受け、経済産業省原子力安全・保安院は13日、東電に当時のデータすべての提出を求める方針を明らかにした。
1号機建屋の地下に汚染水3千トン 漏出? 冠水計画見直し
2011.5.14 23:37 東京電力は14日、福島第1原発1号機の原子炉建屋地下(天井までの高さ約11メートル)の半分程度まで水がたまっているのを確認したと発表した。圧力容器を覆う格納容器から水が漏れているとみており、格納容器ごと圧力容器を水で満たす「冠水(水棺)」に十分な水位が得られない可能性が強まった。東電は地下の水をポンプでくみ上げ、冷却した上で圧力容器に戻す循環方法を検討し始めた。
東電は、漏水場所は格納容器とつながる圧力抑制室と呼ばれる部分の溶接部とみている。建屋地下の容積は約6千立方メートルのため、たまり水は約3千トンに上る可能性がある。
冠水させることで原子炉を安定冷却させる計画を進めていた東電は、格納容器からの漏水が少なければ、ここから水を抜いて再び圧力容器に戻す案を検討していた。だが、今回、大量漏水の可能性が判明したため、急遽(きゅうきょ)たまり水を圧力容器に戻す新ルートの検討を迫られた格好だ。
また、東電は14日、1号機の原子炉建屋1階を13日午後にロボットで調べたところ、最大で毎時2千ミリシーベルトの高い線量を観測したと発表した。1〜3号機原子炉建屋内で測定した放射線量では最大という。
津波前に重要設備損傷か 福島第1原発1号機、地震の揺れで 建屋で高線量蒸気 耐震指針、再検討も
2011.5.15 02:00 東京電力福島第1原発1号機の原子炉建屋内で東日本大震災発生当日の
3月11日夜、毎時300ミリシーベルト相当の高い放射線量が検出されていたことが14日、東電関係者への取材で分かった。高い線量は原子炉の燃料の放射性物質が大量に漏れていたためとみられる。 1号機では、津波による電源喪失によって冷却ができなくなり、原子炉圧力容器から高濃度の放射性物質を含む蒸気が漏れたとされていたが、原子炉内の圧力が高まって配管などが破損したと仮定するには、あまりに短時間で建屋内に充満したことになる。東電関係者は「地震の揺れで圧力容器や配管に損傷があったかもしれない」と、津波より前に重要設備が被害を受けていた可能性を認めた。
第1原発の事故で東電と経済産業省原子力安全・保安院はこれまで、原子炉は揺れに耐えたが、想定外の大きさの津波に襲われたことで電源が失われ、爆発事故に至ったとの見方を示していた。
早い段階でメルトダウン 1号機の冠水「断念」、汚染水の循環にも難問
2011.5.15 20:38 福島第1原発1号機の原子炉建屋地下にたまっているのが発見された約3000トンの水。東京電力は、原子炉からの漏水によるものとして、格納容器ごと水で満たして核燃料を冷やす冠水(水棺)作業を「断念」し、工程表見直しへの影響は避けられない情勢だ。たまり水の外部拡散を防ぐためにも、原子炉に再び循環させるルートを模索するが、高い放射線量が障害になり、工事は難航が予想される。(原子力取材班)
「格納容器やそれにつながる圧力抑制室から漏れた水がたまったとみられる」
東電が14日に発表した、新たなたまり水の存在は、それまでの冠水作業が「夢物語だった」(東電関係者)ことを示した。
4月17日に公表した工程表では、3カ月後までに1、3号機の冠水を完了させる予定だったが、「トップランナー」(原子力安全・保安院の西山英彦審議官)の1号機の頓挫で、計画は暗礁に乗り上げた。 東電は、1号機炉心に1万トン以上を注水したが、少なくとも3000トン近くが行方不明になっており、格納容器から漏れて地下にたまったとみる。 このまま冠水を続けてもたまり水が増え、原子炉建屋外に漏れ出す危険性が高まることから、東電は、このたまり水や格納容器に残る水を圧力容器に循環させて「再利用」する方法を検討している。
だが、1号機は津波到達後の比較的早い段階で「炉心溶融(メルトダウン)」したとみられ、地下のたまり水は高い放射線量が予想される。東電も「循環し続けるだけでは核燃料に触れるたびに放射能が強まるため、浄化処理をした上で原子炉に戻さざるを得ない」としており、新たな設備が必要になる。
一方、原子炉建屋1階では毎時2000ミリシーベルトという極めて強い放射線を観測している。新たな設備や配管を設置する作業は遠隔操作のロボットでは難しく、現場で資材の組み立て、溶接などに当たる作業員の被(ひ)曝(ばく)対策を迫られるのは必至だ。 こうした作業を進める間も、注水による原子炉冷却を止めるわけにはいかず、たまり水が増える危険性は消えない。
日本原子力学会の沢田隆副会長(原子力安全工学)は「たまり水は原子炉建屋に隣接するタービン建屋に一部流れ込んだ可能性がある。早期に作業を進めないと海などへ汚染が拡大し、さらなる問題が生じかねない。時間との闘いになっている」と指摘している。
1号機、地震16時間後にメルトダウン 4号機の爆発は3号機の水素逆流が原因か
2011.5.15 23:27 東京電力は15日、福島第1原発1号機で、地震発生から16時間後の3月12日午前6時50分ごろには大部分の燃料が原子炉圧力容器の底に溶け落ち、全炉心溶融(メルトダウン)を起こしていたとの暫定評価を発表した。
東電によると、地震約45分後の津波で非常用の冷却機能が失われたと仮定したところ、地震発生直後の自動停止から3時間後の11日午後6時ごろには燃料の頂部まで水位が低下。午後7時半ごろには燃料がすべて水面から露出し、損傷が始まった。
午後9時ごろには、炉心の最高温度が、燃料が溶ける2800度に達し、12日午前6時50分ごろには燃料の大部分が圧力容器底に落下したという。
また、東電は15日、4号機で3月15日に原子炉建屋が大破したのは、3号機原子炉で発生した水素が、4号機と共通の配管から4号機側に逆流し、爆発した可能性が高いとの見方を明らかにした。 3号機で放射性物質を含む蒸気を逃した排気作業の際、通常は稼働している4号機側の排風機が、当時は停電で作動しておらず、4号機側に水素が流入したとみられるという。
「1号機は安定状態」原子力安全委 「展望変えず」工程表で首相
2011.5.16 11:20 原子力安全委員会の班目春樹委員長は16日午前の衆院予算委員会で、メルトダウン(炉心溶融)が判明した東電福島第1原発の現状について「温度はどんどん下がっており、原子炉圧力容器底部の温度は現在100度程度で、一定の安定状態にある」との認識を示した。
また菅直人首相は、事故収束までの期間を6〜9カ月とした東電の工程表について「(収束作業の)手だてに多少の変化はあるかもしれないが、なんとか時間的な展望は変えずに進めることができるのではないか」と述べた。 さらに、17日にも東電が工程表の改定を発表することに関連し、「政府としても対応し、どのようなことを進めていくかをまとめて発表したい」と述べた。
東電の清水正孝社長は、「資金調達が極めて厳しく、資金がショートして公正、迅速な補償ができなくなる可能性もある」と述べ、公的資金を投入するための賠償支援関連法案の今国会での成立を求めた。
3号機の汚染水移送へ 東電、17日から 温度安定へ注水増加
2011.5.16 12:42 東京電力は16日、福島第1原発3号機のタービン建屋などにたまった放射性物質を含む水を、17日から敷地内の集中廃棄物処理施設へ移送し始めると発表した。3号機では原子炉温度の急上昇に対応するため注水量を増やしており、格納容器から漏れ出す水の増加が懸念されていた。 汚染水の移送予定量は約4千トン。ポンプで吸い上げ、隣にある4号機タービン建屋の中を経由して同施設までホースで運ぶ。ホースからの漏えいや放射線への対策については経済産業省原子力安全・保安院に報告済みだという。
3号機のタービン建屋地下や立て坑にたまった汚染水の水位は、現段階で1日に2センチ前後のペースで上昇。11日に取水口近くの作業用の穴から海に流出しているのが見つかった汚染水も、ここに由来する疑いがある。
2、3号機でも溶融の可能性 汚染水、17日から移送へ
2011.5.16 21:45 東京電力福島第1原発事故で、事故対策統合本部事務局長の細野豪志首相補佐官は16日、「1号機で炉心の完全溶融(全炉心溶融)をなかなか認定できなかったのは反省しなければならない。2、3号機でもそういうことがあり得ると考えている」と述べ、両機でも全炉心溶融(メルトダウン)が起きている可能性があるとの認識を示した。 細野補佐官は、3月11日の地震直後、原子炉への冷却水の注入が途絶えたのは1号機が14時間9分、2号機が6時間29分、3号機が6時間43分だったとした。
東電も「1号機同様に、2、3号機でも実際の水位は見かけより低い」として、「最悪のケースでは、炉心の形状を維持せず、落下している」との見方を明らかにしている。 また、東電は同日、3号機タービン建屋地下などにたまった高濃度の放射性物質を含む汚染水を、17日から集中廃棄物処理施設に移送すると発表した。 移送される汚染水は約4千トン。4号機タービン建屋内を経由して集中廃棄物処理施設までホースを敷設し、ポンプでくみ上げる。3号機タービン建屋地下などには約2万2千トンの汚染水があるとみられている。
メガフロートが福島到着 第1原発の汚染水貯蔵
2011.5.17 09:18 福島第1原発の敷地内にたまった放射性物質を含む汚染水を貯蔵するため、東京電力が静岡市から譲り受けた人口の浮島「メガフロート」が17日朝、福島県いわき市の小名浜港に到着した。 同港で最終的な点検と調整を行い、順調なら5月下旬に第1原発の岸壁に接岸される。 メガフロートは全長約136メートル、幅約46メートル、高さ3メートルの鋼鉄製で、内部の空洞に約1万トンの水の貯蔵が可能。静岡市の清水港で海釣り場として利用されていたが、4月に東電に引き渡され、横浜港の施設で防水処置や点検を受けていた。 東電は比較的低レベルの汚染水を除染剤などで浄化した上で保管する方針。
福島第1原発事故直後の資料公開 「1号 水位計あてにならない」
2011.5.17 09:35
16日、東京電力が公開した福島第1原発に残っていた東日本大震災発生直後の計器データや作業員の日誌などからは、発生した事柄を、時系列で記入したホワイトボードなど、緊迫した状況を伝える写真が含まれていた。ホワイトボードには「入域禁止 社長指示」「1号 水位計あてにならない」など、事故発生当時の現場の混乱ぶりを示す書き込みがある。同じ内容を紙に書き写した作業員のメモも公開した。
公開資料はこのほか、計器類で自動的に記録された原子炉の水位や圧力、温度、地震観測記録などのデータがあった。原子炉への注水状況や、放射性物質を含む蒸気を意図的に外部に放出する「ベント」、安全弁の操作などの実施の段取りも、作業員の日誌や証言を基に整理した。 また原発敷地内で鉄塔が倒壊した様子や、斜面の土砂崩れの生々しい写真も公開した。
資料の多くは、原子炉各号機の中央制御室のハードディスクや紙に記録されていた。室内の放射線量が高く、資料も放射性物質に汚染されていたことから、回収が後回しになっていた。
枝野長官「冷却装置説明を要求 1号機 津波前に手動停止か
2011.5.18 01:32 東京電力福島第1原発事故で、1号機の非常用冷却装置が地震後約10分で停止したことに関し、これが手動で停止された可能性があり、枝野幸男官房長官が17日の会見で「事実関係と経緯について詳細に東電に報告を求め、それを踏まえて評価、判断する必要がある」と述べた。 冷却装置が停止したのは津波の到達前。東電はこれまで、冷却装置の停止は津波が原因と説明していた。 非常用復水器を動かし続ければ燃料の損傷が遅れ、爆発の原因となった水素の発生を抑えられた可能性があるという。枝野長官は17日に「報道で知った」といい、重要な事実が政権中枢に伝わっていなかった可能性がある。 東電によると、1号機では本震発生直後の3月11日午後2時52分ごろ、緊急時の炉心冷却に用いる非常用復水器が起動したが、約10分後に停止した。急速な温度変化による圧力容器損傷を避けるため、手動停止させた可能性がある。津波到達は午後3時半ごろだった。
2号機原子炉建屋に作業員 3月の爆発音以来初
2011.5.18 11:47 福島第1原発2号機の原子炉建屋の放射線量などを調べるため、東京電力の作業員が18日、建屋内に入った。放射線量やちりの計測、設備の破損状況を調べるのが目的で、同建屋に人が入るのは、3月に原子炉格納容器につながる圧力抑制プール付近で爆発音がして以来、初めて。 2号機でも1号機と同様、水位や圧力が正しく計測できていない恐れがあり、東電は調査結果を踏まえて建屋内で計測機器を調整し、水を循環させて原子炉を冷やすシステム構築の準備を進める。 原子炉建屋内には4月18日に遠隔操作のロボットが入ったが、高い湿度でカメラが曇り調査を中断。ロボットが建屋1階で測った放射線量は毎時4・1ミリシーベルトだったが、内部の様子はほとんど分かっていない。 当初、17日午後の調査を予定したが、放射線を遮る効果の高い防護服を着用する必要があるかの確認に時間がかかり延期していた。
2号機建屋に爆発後初の立ち入り 第1原発全体の汚染水は10万トン超に
2011.5.18 22:18 東京電力は18日、福島第1原発2号機の原子炉建屋に社員4人を入れ、放射線量などを調べた。同建屋に人が入るのは、3月15日に原子炉格納容器につながる圧力抑制室付近で爆発音がして以来、初めて。線量やちりに含まれる放射性物質を分析したうえで、建屋内部での作業にあたって浄化対策などを検討する。
調査は約15分間で内部の線量は毎時10以下〜50ミリシーベルト程度。4人の被(ひ)曝(ばく)線量は3・33〜4・27ミリシーベルトだった。 建屋内は燃料貯蔵プールから出ているとみられる蒸気が充満している。4月18日に入った遠隔操作のロボットの計測によれば、内部は94〜99%の非常に高い湿度で、作業を妨げている。
現在は仮設ポンプでプールに注水しているが、東電は、空冷装置を取り付けて水を冷やし、蒸気を減らす計画だ。稼働すれば約1カ月でプールの水温を約40度まで冷却できるという。16日からケーブル敷設などの準備作業を始めており、24日から装置の設置を開始。31日にも試運転を行い、本格運用を始める方針だ。 2号機は、原子炉内の水位や圧力が正しく計測できていない恐れが出ている。東電は今回の調査結果をふまえて計測機器を調整し、燃料の溶融の状態の推定や、水を循環させて炉内の燃料を冷やすシステム構築の準備を進める。
一方、東電は18日、1〜6号機のタービン建屋地下などにたまった汚染水の総量は推計で9万8500トンと発表。移送した汚染水も含めると10万トン超になる。
汚染水利用の循環注水冷却に懸念 再流出の懸念も
2011.5.18 22:10 福島第1原発の原子炉安定冷却に向け、東京電力が新たに発表した「循環注水冷却」。格納容器を水で満たして燃料を冷やす「冠水(水棺)」が困難となり、タービン建屋の汚染水を循環させる手法に切り替えたが、短期間での冷却効果には疑問符が付き、汚染水の外部流出など不安材料はつきない。改訂工程表で7月中旬までとした安定冷却の道程は、長引く恐れもある。(原子力取材班)
■自信
循環注水冷却は、原子炉に注入した水が漏れ、原子炉建屋や隣接するタービン建屋にたまっている汚染水をポンプで吸い上げ、放射性物質を除去して再び原子炉内に戻すという手法だ。 タービン建屋から水をくみ上げ、原子炉に注水する配管を使えばよく、原子炉建屋での作業を減らせるメリットもある。 東電は「冠水よりも難易度は低い」としており、武藤栄副社長も「(冷却期限の)目標は達成できるだろう」と自信を見せる。
■耐性
果たして、東電の想定通りに進むのか。早稲田大の岡芳明教授(原子炉工学)は「汚染水が海や地下水に流出する可能性がある」と指摘する。 原子炉建屋やタービン建屋などは本来、水をためる設計にはなっていない。岡教授によると、両施設の境目などは耐震性が低く、地震の影響でひびが生じ、そこから地下にしみ出る可能性があるという。
実際に、2号機と3号機の汚染水が、地下の配管などを通じて海に流出しているのが見つかっている。東電は流出防止策として、原子炉建屋などの周囲の地下に、深さ約30メートルの壁をつくる対策を掲げるが、流出が十分防げるかは不透明だ。
■効果
「高濃度の汚染水が配管を通るため、一度循環を始めたら人が近づきにくくなる。入念な準備をした上で始めないと取り返しがつかない事態になる」 こう指摘するのは、北海道大の奈良林直教授(原子炉工学)。トラブルが発生した場合、修理などが難しいのが、循環注水冷却システムの欠点だという。 また、冠水に比べ、十分な冷却効果が得られるかも不透明だ。「どの程度冷却できるかは、実際水を回してみないと分からない」(東電)というのが本音で、工程表通りに事態が推移するかは予断を許さず、長期化も懸念される。
月末に2号機燃料プール本格冷却 水循環させ熱除去
2011.5.18 22:42 東京電力は18日、福島第1原発2号機の原子炉建屋内にある使用済み燃料プールに、水を循環させながら効率的に熱を取り除く冷却システムを月末までに設置する計画だと明らかにした。現在は燃料が発する熱で蒸発した分を随時、内部の配管から注水している。 より安定した冷却を実現するとともに、建屋内の湿度も軽減したい考え。この日は建屋内の放射線量などを調べるため社員4人が中に入ったが、4月のロボットによる調査の時と同じく、湿度の高い状況だったという。 計画では、23日までに電気関係の工事を終え、その後、近くの建屋内外に熱交換器や空冷式の冷却装置を設置。31日に試運転を行い、問題がなければ本運転に入る。 建屋が爆発で損壊している1、3、4号機でも、外からの放水を本来の配管からの注水に切り替えた上で、同様の冷却システムを設置する考えだ。
3号機にも初めて作業員、1〜4号機すべてで内部を確認 福島第1原発
2011.5.19 11:33 東京電力は19日、福島第1原発3号機の原子炉建屋に18日夕、放射線量調査などのために作業員2人が入ったと発表した。東電によると、東日本大震災による事故後、同建屋に入ったのは初めてで、事故収束作業が続く1〜4号機すべての原子炉建屋に人が入り、内部を確認したことになる。
東電によると、18日午後4時半ごろから約10分間、建屋に入り、一部の場所で放射線量を計測。毎時160〜170ミリシーベルトや同50ミリシーベルトだった。2人の被ばくは2.85ミリシーベルトと2.08ミリシーベルト。1階の一部に水たまりが見つかった。小雨のように上から水が垂れている場所もあったという。
水素爆発を防ぐ窒素注入に向けた作業場所を確認する目的だった。東電は「放射線量が高いので遮蔽を検討するが、作業が無理なら別の場所から窒素を入れることも考える」とした。立ち入りの公表が遅れたことも陳謝した。
「警告音慣れた」「2時間で汗だく」原発内部…作業員語る
2011.5.19 21:26
2時間の作業で汗だくになり、すし詰めで弁当を食べる。線量計の警告音にも慣れた。東京電力福島第1原発内で、5月上旬から約2週間働いた男性作業員が、産経新聞に内部の様子を語った。3号機の原子炉建屋近くのがれきは、毎時70〜80ミリシーベルトもの高い放射線量を検出したという。 東京電力は19日、福島第1原発3号機の原子炉建屋に放射線量調査のため社員2人が入ったと発表。これで1〜3号機すべての原子炉建屋に人が入った。東電によると、18日午後4時半ごろから約10分間、建屋内で放射線量を計測したところ、最高で毎時170ミリシーベルトを計測。2人の被曝(ひばく)は最大2・85ミリシーベルトだった。 18日午前に社員が入った2号機原子炉建屋では、1階の一部に水たまりが見つかった。水蒸気が充満し、15分以上作業するのは困難だ。うち1人は熱中症になり、点滴を受けたことを明らかにした。 依然、原発内で強いられている厳しい作業。原子炉の安定的冷却を目指す今後の作業のハードルは高い。
男性作業員は重機の搬入路などを確保するためのがれきの撤去に従事した。 朝起きると、福島県内の宿舎から活動拠点の「Jビレッジ」に移動して防護服を着用。1時間ほどかけて、福島第1原発の免震重要棟に入り、防護マスクを着け防護服を着替える。
一回の作業は2時間。作業後、免震重要棟に戻り防護服を脱ぐ。「免震重要棟の中はすし詰め状態で、階段や廊下にも人があふれていた」。場所を見つけて休憩、昼食。メニューはカレーやビーフシチュー、マーボー丼、牛丼などのレトルト食品にレトルト白米だ。 2時間の休憩後、防護服を着て2時間作業する。 線量計は毎朝、リセットされたものを渡された。積算1ミリシーベルトを超えるごとに短い警告音、5ミリシーベルトになると警告音が鳴り続け、作業は中止。「警告音は最初は怖かったけど、慣れると、短い警告音では動じなくなった」という。
防護服やマスク、三重の手袋に、高い線量。「慣れない状況だし、作業は思い通りに進まなかった」。余震も多く、そのたびに作業は中断した。防護マスクを着けると会話が困難になるため、事前に作業の打ち合わせを重ねた。 作業後は汗で下着までぐっしょりになった。「夏が近づくにつれ、大変だ。休むスペースも狭い。環境を改善する必要がある」と話した。
原発から2〜7キロの土壌 プルトニウム検出せず
2011.5.19 23:25 文部科学省は19日、福島第1原発から約2〜7キロの地点で採取した土壌に毒性の強い放射性物質プルトニウムが含まれているか調査した結果、今回の事故によるものは検出されなかったと発表した。 土壌は、4月29日から5月1日にかけて、福島県大熊町と双葉町の計4カ所で採取。うち3カ所で微量のプルトニウムを検出したが、同位体の比率から過去の大気圏内核実験によるものとした。
1号機建屋地下で水位測定 高線量の分布調査
2011.5.20 16:26

福島第一原発の1号機タービン建屋1階=5月6日(東電提供)
福島第1原発事故で東京電力は20日、燃料がメルトダウン(全炉心溶融)した1号機の原子炉建屋に作業員2人を入れ、原子炉格納容器から漏れて地下にたまっている水の水位を測定した。14日に発見したときの目視では、深さ4.2メートルとみられていた。 ほかに作業員4人も入り、ガンマカメラという特殊なカメラで内部を撮影、放射線量が高い場所の分布を詳しく調べた。
2号機では、新たな工程表で示した「循環注水冷却」に向け、原子炉に水を入れる配管を消火系から給水系に切り替える作業に着手した。
4号機の使用済み燃料プールには20日までに水位計を設置した。水位と温度のデータが無線で対策拠点の免震重要棟に送られ、常時監視できる。
静岡市が提供した人工の浮島「メガフロート」は20日夕、福島県の小名浜港を出発した。