2011年11月18日 朝刊(東京新聞)
福島市大波地区の農家一戸のコメから国の暫定規制値(一キログラム当たり五〇〇ベクレル)を超える六三〇ベクレルの放射性セシウムが検出された問題で、政府は十七日、大波地区でことし収穫されたコメについて、原子力災害対策特別措置法に基づく出荷停止を福島県に指示した。東京電力福島第一原発事故後、コメの出荷停止は初めて。 当該農家が収穫したコメ(八百四十キロ)は流通しておらず、廃棄処分される。福島県では佐藤雄平知事が十月十二日、コメの「安全宣言」を出していた。
この問題に関連し政府は、コメを出荷停止とした場合「その地域の二〇一一年産米は出荷停止を解除せず、全量廃棄させる」とのルールを見直す方針を固めた。
「地域全体が汚染されている可能性は低い」と判断したためで、今後、大波地区の他の農家が収穫したコメの再検査を実施。規制値を下回り安全が確認されれば出荷再開を認める方向だ。ただ当初の厳格な方針を緩和する形となるため批判が出ることも予想される。
福島県によると、大波地区の稲作農家は百五十四戸、作付面積四十二ヘクタール、コメ生産量約百九十二トン。
農林水産省は八月、コメの放射性物質を収穫前後の「予備調査」「本調査」の二段階で実施すると発表。主食の安全を確保するため、各地域の本調査で暫定規制値を超える地点が一カ所でもあった場合、地域全体を出荷停止として全量廃棄を義務付け、一一年産米は出荷停止を解除しない方針を示していた。
しかし福島県全域のほか、他県でも、この秋の二段階調査で規制値を上回った地点はなかった。このため、安全が確認できた農家の出荷停止解除は可能と判断。福島県による地形、土壌の調査なども踏まえ、出荷停止解除の可否や範囲を決める見通し。
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コメント:農林水産省の考え方は、お粗末ですね。=>稲わらの時に似ていますね。
各・田で収穫されて米のサンプル調査をしなければ、安全かどうか判断できません。米のセシウム量がいくらだと表示すべきです。
チェルノブイリより、蓄積量が多い(6〜60倍)土壌があるのですから、もっと慎重になるべきです。
暫定規定値は、チェルノブイリの規定値より5倍も緩いそうだ(チェルノブイリでは100Bq/kg)。
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福島第1原発事故で、政府と東京電力の統合対策室は17日、事故収束に向けた工程表の7回目の改訂を行った。年内達成を目指すステップ2の最大目標である原子炉の「冷温停止状態」の宣言について、細野豪志原発事故担当相は「年内の達成は可能だが、慎重に確認する必要がある」として先送りした。新たな課題として、「廃炉に向けた工程表の作成」を盛り込んだ。
東電が同原発から放出されている放射性物質(放射能)の量を計算したところ、毎時約0・6億ベクレルで、事故直後の約1300万分の1まで減少。1カ月前と比べても4割減となった。
原発周辺の年間被曝(ひばく)線量は0・1ミリシーベルトと評価し、目標の1ミリシーベルトを大きく下回っている。 この理由について細野氏は、1〜3号機の冷却が進み、圧力容器下部の温度が100度を大幅に下回る30〜60度台になったことを挙げ、「蒸気の発生が抑えられ、放射性物質の放出の抑制が維持できている」と説明した。圧力容器の外側にある格納容器の温度も下がっていることから、「格納容器に溶け落ちた燃料も冷却できている」とした。 警戒区域と計画的避難区域の解除について明言はしなかったが、「解除後に再び避難することがないようにしたい」と述べた。 改訂工程表では、1号機の原子炉建屋カバーが10月下旬に完成したことなどから、「放射性物質の飛散抑制」の達成を明記。「海洋汚染の拡大防止」についても、汚染水の海への漏出を防ぐための遮水壁設置に向けた地質調査に着手したため、達成したと評価した。
ステップ2達成に向けた残る課題は、冷温停止状態のほかは、作業員の生活環境の改善や医療体制の改善など。東電は「引き続き継続的な改善が必要」とした。
政府は8日、福島県に対し、原子力災害対策特別措置法に基づき、同県二本松市の旧渋川村でことし収穫されたコメの出荷停止を指示した。旧渋川村の農家1戸のコメから、国の暫定基準値(1キログラム当たり500ベクレル)を超える同780ベクレルの放射性セシウムが検出されたため。 東京電力福島第1原発事故後、コメの出荷停止措置は4例目。制限対象は福島市の大波地区と旧福島市、伊達市の旧小国村と旧月館町と合わせ、計3市5地域となった。
福島県によると、旧渋川村の農家数は248戸。基準値を超えた農家が収穫したコメ約1トンは自宅のほか、近隣住民が保管しており、一般には流通していない。
福島県の佐藤雄平知事は8日、基準値を超える放射性セシウムの検出が相次いでいることについて「(コメの出荷の可否を判断する)モニタリング調査で一日も早く安全性を確認し、早期出荷に結び付けたいと思ったのも事実。結果として生産者、消費者に大変な心配をかけ、痛恨の極みだ」と謝罪した。
知事は「空間放射線量の高い地域でのモニタリング方法について、多くの専門家の意見を聞く必要があったと反省している」と検査態勢の不備を認め、国や大学などと協力して基準値超えの原因究明を進める意向を示した。
東京電力福島第1原発事故で、政府の原子力災害対策本部(本部長・野田佳彦首相)は16日、1〜3号機の「冷温停止状態」が達成できたとして、事故収束の工程表ステップ2の終了を決めた。
同本部は、1〜3号機の原子炉圧力容器下部の温度が約37〜67度(16日現在)と100度を下回っていることや、原発敷地境界の被曝(ひばく)線量が年間1ミリシーベルト以下となっていることから、冷温停止状態の条件を満たしたと判断した。
今後は避難した住民の帰宅に向け、計画的避難区域や警戒区域の本格的な見直しが始まるほか、第1原発の廃炉に向けた工程表が月内に公表される。
<コメント:(1)圧力容器の温度は、67℃以下になっているが、ここにある燃料棒は少し。
ほとんどが格納容器に溶け落ちており、この格納容器の状態と温度は不明とのことです。(もっと調査しないとダメですね)
(2)汚染水対策はまだですね。
(3)原発敷地境界の年間1ミリシーベルト以下は、過去の放出した放射線量は差引いている。 実際は(過去の放射線があるので)、
年間87ミリシーベルトになっています。 >
事故調査・検証委員会の中間報告では、東京電力福島第1原発事故での原子炉への海水注入をめぐる生々しいやりとりが明らかになった。菅直人首相(当時)が事故対応への介入を続け、混乱を助長したことがまたも裏付けられた。
中間報告によると、1号機の危機的状況が続く3月12日夕、菅氏は首相執務室で班目春樹原子力安全委員会委員長、武黒一郎東電フェローらと協議。午後7時すぎ、武黒氏が第1原発の吉田昌郎所長に電話で海水注入の準備状況を聞いた。
吉田氏が「もう始めている」と答えると武黒氏は「今官邸で検討中だから待ってほしい」と要請。吉田氏は「自分の責任で続けるしかない」と考え、作業責任者にテレビ会議のマイクに入らないような小声で「これから海水注入中断を指示するが、絶対に止めるな」と話し、大声で注入中断を指示したという。
12日朝の菅氏の原発視察の際も吉田氏は「応対に多くの幹部を割く余裕はない」と困惑。14日夜には吉田氏は自らの死も覚悟し、必要な要員以外は退避させようと判断、総務班に退避用バスの手配を指示した。菅氏が15日朝、「撤退したら百パーセント潰れる」と東電本店に怒鳴りこんだのは、この指示を勘違いした公算が大きい。
菅氏は官邸5階に閣僚を集める一方、地下の危機管理センターに各省庁局長級の緊急参集チームを設置。指揮系統が二重になった上情報集約もできず、放射性物質拡散予測システム「SPEEDI」の活用にも支障が出ていた。