東京電力は1日、福島第1原発1、2号機の原子炉建屋間にある屋外の主排気筒下部付近で、毎時10シーベルト以上の高放射線量を観測したと発表した。敷地内で観測された線量で最も高く、急性被曝(ひばく)で死亡するとされる7シーベルトを42分で超える値。
東電は周辺を立ち入り禁止にし、遮蔽(しゃへい)する。
東電によると、がれき撤去後に線量の変化を測定していた作業員が、同日午後2時半ごろ確認した。約3メートル離れた場所から棒の先に計測器をつけて測ったところ、測定限界の10シーベルトを超えた。計測した作業員の被曝線量は最大4ミリシーベルトだった。
付近には原子炉から放射性物質を含んだ気体を逃がすベント(排気)作業で使用した配管があり、東電は「事故時のベント作業の影響とみられる」とした。これまで敷地内の最高値は、6月に1号機原子炉建屋1階で計測した4シーベルトだった。
また、東電は同日、汚染水が海洋流出するのを防ぐ遮水壁について1〜4号機そばの護岸外側に、海側遮水壁(深さ約30メートル)をステップ2(来年1月中旬まで)内で着工すると発表した。8月中に設計を終える。工期は約2年。 東電によると、海側の遮水壁は、既設護岸から数メートル沖に全長約800メートルにわたって鋼管矢板を打ち込んで設置、護岸との間を埋め立てる。陸側はステップ2内に調査、検討を終える。
汚染水浄化システムでは、新たに設置した放射性セシウム除去装置「サリー」の淡水による通水試験が同日、始まった。
経済産業省原子力安全・保安院は24日、東京電力が福島第1原発に高さ10メートルを超える津波が来るとの試算結果を、震災直前の3月7日に報告していたことを明らかにした。原発事故をめぐる第三者機関「事故調査・検証委員会」に報告したとしている。
試算では第1原発の5、6号機でいずれも海抜10・2メートルの津波を推定。2号機で9・3メートル、1、3、4の各号機でも8・7〜8・4メートルに及んでいた。保安院によると、同原発の敷地が浸水するレベル。
従来の東電の想定津波は最大5・7メートルで、震災の津波では14〜15メートルまで海水が到達した。
2011/08/24 19:53 【共同通信】
2011年8月25日(東京新聞)
政府が、東京電力福島第一原発の1〜3号機事故と、一九四五年の広島への原爆投下で、それぞれ大気中に飛散した放射性物質の核種ごとの試算値をまとめ、衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会に提出していたことが分かった。
半減期が約三十年と長く、食品や土壌への深刻な汚染を引き起こすセシウム137の放出量を単純比較すると、福島第一原発からの放出量は広島原爆一六八・五個分に相当する。
福島第一原発事故は今年六月の国際原子力機関(IAEA)閣僚会議に対する日本政府報告書、広島原爆については「原子放射線の影響に関する国連科学委員会二〇〇〇年報告」を基に試算されている。
セシウム137の放出量は、福島第一原発1〜3号機が一万五〇〇〇テラベクレル(テラは一兆)、広島原爆が八九テラベクレル。
このほかの主な核種では、福島事故で大量に飛散したヨウ素131(半減期約八日)は、福島が一六万テラベクレル、広島が六万三〇〇〇テラベクレルで、福島は広島原爆約二・五個分。
半減期が約二十八年と長く、内部被ばくの原因となるストロンチウム90が、福島が一四〇テラベクレル、広島が五八テラベクレルで、広島原爆約二・四個分となる。
ただ、政府は特別委に対し、福島事故と広島原爆との比較自体には「原子爆弾は爆風、熱線、中性子線を放出し、大量の殺傷、破壊に至らしめるもの。放射性物質の放出量で単純に比較することは合理的ではない」と否定的な考えを示している。
試算値は川内博史衆院科学技術・イノベーション推進特別委員長が八月九日の同委員会で「広島型原爆の何発分かを政府として正確に出してほしい」と要求していた。
水産庁は30日、福島県沖合で4月21日に採取したマダラから放射性ストロンチウム90が1キロ当たり0.03ベクレル検出したと発表した。水産庁の調査で、福島第1原発事故以後、水産物からストロンチウムが検出されたのは初めてだが「微量で、原発事故の影響かは不明」という。
ストロンチウム90は半減期が30年近くで、体内に入ると骨に取り込まれやすく、骨のがんや白血病の原因になる恐れがあるとされる。海水からストロンチウムが検出されたことを受けて、水産庁が水産総合研究センターに調査を依頼していた。
ストロンチウム自体の基準値は設定されていないが、セシウムの基準値(500ベクレル)を下回れば、食べても問題ないとされている。福島県ではカツオを除いて海洋での漁業を自粛している。
環境省は27日、東北、関東地方など16都県を対象に廃棄物焼却施設で出た焼却灰を調べた結果、7都県42施設で、埋め立て可能な暫定基準(1キロ当たり8000ベクレル)を超える放射性セシウムが検出されたと発表した。東京電力福島第1原発事故による汚染が広範囲に広がっていることが改めて示された。
同省は福島県に限り、同10万ベクレルまでは埋め立てを許容する方針を既に提示しており、福島県以外にもこの方針を拡大する考えだ。
調査は、東京都内の焼却施設で6月、暫定基準を超える放射性セシウムが検出されたことから、青森県を除く東北5県、関東・甲信越地方と静岡県の計16都県に対して同省が要請していた。
その結果、焼却灰のうち、焼却炉内に残った「主灰」からは、福島県内の7施設で放射性セシウムが暫定基準を超えた。フィルターなど集じん設備から回収した「飛灰」からは、岩手2▽福島16▽茨城10▽栃木3▽群馬2▽千葉8▽東京1−−の各施設で暫定基準を超えた。最も高い数値は、福島市内の焼却場で検出された9万5300ベクレルだった。
同省は、各地の焼却場で処分できない汚染灰の一時保管所が満杯に近づいている事態を重視。27日開かれた、がれき処理に関する安全性検討会では「廃棄物処理を進め、身近な環境から放射性物質を取り除くことが重要」として、8000ベクレル以下の焼却灰は従来通り埋め立て処分を急ぐ一方、8000ベクレル超〜10万ベクレルの焼却灰についても福島県同様、適切に処分することが必要との意見で一致した。
試算では、焼却灰中の放射性セシウムが1キロ当たり10万ベクレルまでの場合、埋め立て場所の周辺住民の被ばく量は、作業中でも一般人の年間線量限度(1ミリシーベルト)を下回り、埋め立て後は100分の1以下になるという。
ただし、雨水に溶け出して地下水を汚染しないよう、焼却灰をセメントで固めるなどの処理が必要。また、埋め立て後の放射線量モニタリングや跡地利用の制限などの対策も欠かせないとしている。【江口一】 毎日新聞 2011年8月27日 20時58分
たまった放射性物質を取り除く除染について、専門家は「短時間で完了する技術や機械は開発されていない」と指摘する。土壌表面をはぎ取ったり、草を刈り取ったり、水でこすり落とすといった地道な作業を繰り返し、徐々に放射線量を低減させるのが現状だ。
政府の基本方針では、年間20ミリシーベルト以下の地域では道路や屋根、公園の遊具などは、水で洗い流す方法で除染可能だとしている。しかし、土壌や川に汚染水が染み込めば放射性物質を周囲に広げる。チェルノブイリ原発事故(86年)では、建物に付着した放射性物質を水で洗った際、洗浄水の流れ着いた先で線量が数倍に高まった。
放射性廃棄物の処分場の確保も課題だ。福島県伊達市が行った実証実験では住宅3軒の周囲の土を取り除いただけで35トンの汚染土が出た。セシウム137の半減期は30年。長期間の徹底管理が求められる。
一方、20ミリシーベルトを上回る地域は国が直接除染するとした。東京電力福島第1原発から3キロの大熊町小入野では、年間の累積線量が508・1ミリシーベルトと推計されている。除染活動を支援する日本原子力研究開発機構の担当者は「作業員の確保すら難しい」と嘆く。政府が掲げた「2年で半減」の目標を達成しても帰宅の目安とされる20ミリシーベルトにほど遠い。【久野華代、西川拓】
毎日新聞 2011年8月26日 20時57分(最終更新 8月26日 23時18分)
東京電力福島第1原発事故で放出された放射性物質は、東北だけでなく関東や甲信越など広範囲に拡散し、ヨウ素131の13%、セシウム137の22%が東日本の陸地に落ちたとの分析結果を、国立環境研究所(茨城県つくば市)の大原利真・地域環境研究センター長らが25日までにまとめた。 大原さんらは、大気汚染物質の拡散を予測するモデルを使い、3月11日の事故発生から3月下旬までに、放射性物質が東日本でどう拡散したかを分析した。
放射性物質は風に乗って移動し風や雨の影響で地面に沈着。北は岩手や宮城、山形の各県から、南は関東を越え静岡県にも届き、新潟や長野、山梨の各県にも到達した。
ヨウ素131の沈着は風の影響が大きく、セシウム137は風に加え雨とともに落下する。一部の地域で問題になっている局所的に放射線量が高い「ホットスポット」の出現は、雨の降り方などが影響したと考えられるという。東日本の陸地に沈着した以外の放射性物質は、大半が太平洋に落ちたとみられる。 結果は米地球物理学連合の学会誌に掲載された。 毎日新聞 2011年8月25日 18時48分
東京電力福島第1原発事故で飛散した放射性物質を除去(除染)するため政府が26日に決定した基本方針は、年間線量が20ミリシーベルト以下の地域では市町村を除染主体と位置づけ、汚染土壌などの仮置き場の設置も求めた。自治体への「丸投げ」とも言える内容に、福島県内の首長らからは憤りの声が上がる。一方、原発から3キロ圏内で放射線量の高い双葉、大熊両町では同日、初の一時帰宅が実施されたが、参加者からは「もう住めないだろう」との嘆きも聞かれた。
放射線量が20ミリシーベルト以下と想定される地域は主に緊急時避難準備区域に指定されている。全域が同区域で住民の9割以上が町外に避難している広野町の山田基星町長は「年間被ばく線量を1ミリシーベルト以下にするという目標を掲げながら肝心の除染を自治体任せにするのはおかしい」と基本方針に憤る。25日に国の担当者が説明に来た際、抗議したという。
「国の方針を待っていたら町の復興は遅れるだけ」(山田町長)と、同町は9月から学校などの除染を独自に行うが、予定する仮置き場に住民の理解を得られるかなど「問題は山積している」(町災害対策本部)。
同区域を市内に抱える南相馬市の桜井勝延市長も「国の責任で取り組むよう求めたい」とコメントし、不満を示した。同市も独自の除染計画を策定しているが、市の幹部は「当然やらなければならない国や東電が一切動かないからだ。国は何を考えているのか分からない」と批判した。
【高橋克哉、神保圭作】
除染に欠かせない仮置き場だが、住民の反対で自治体などが苦境に立たされるケースが相次いでいる。 放射線量が比較的高い「ホットスポット」がある福島市渡利地区では7月下旬、住民ら約3800人で大規模な除染実験を行った。市は側溝などからかき出した泥の仮置き場として山間部にある市の処分場を選び、約6000袋を持ち込んだ。
だが、周辺住民が猛反発。数百メートル離れた場所に住む主婦(50)は「近所の除染で出たのなら仕方がないが、よそから運ばれてくるのは納得できない」。市は新たな仮置き場の選定を迫られた。
国土交通省福島河川国道事務所が8月上旬に二本松市の堤防で刈り取った雑草を河川敷に埋めた際にも反発が起きた。雑草は従来、飼料や堆肥(たいひ)に利用していたが、原発事故後は放射性物質を含むため河川敷に仮置きしたところ、作業を見た住民が市に問い合わせ問題化。近くの男性(44)は「放射線に敏感になり精神的に参っている。自分の家のそばに置きたくないのは当然だ」と話す。【竹内良和、椋田佳代】
毎日新聞 2011年8月26日 20時54分(最終更新 8月26日 23時18分)